何のために生きている?

と問われれば、もっと幸せな人間社会が見たいから

当初、超特急でやるつもりだった「歴史」

=「日本のはじめ」物語が、各駅停車なみの速度になってしまいました。

いやあ、すぐそこだと思っていた「大友皇子=李忠」駅までが遠い遠い(笑)

 

「各駅停車」ついでに、といってはナンですが、昨晩は日本書紀の「雄略天皇」駅に「下車」してうろうろして(読んで)いましたら、これがやたら面白い。

 

雄略天皇」=「宋書」における「倭の五王」の「武」=蘇我氏の「大王」

ということを前提として読むと、引き込まれてしまうほどの面白さ。

 

この「雄略天皇」、「本文」ではほとんど「恐怖の悪王」として描かれています。とにかく人を殺す殺す。

 

まず、「天皇(大王)」即位の直前に、(前の天皇安康天皇)を殺した子供(安康天皇の皇后の連れ子、7歳?)とその子どもを匿(かくま)った勢力の人たちをほとんど皆殺しにしてしまいます。

そうして即位?すると、以前安康天皇皇位を継承させようとしていたライバルの市辺押盤皇子(いちのへのおしわのみこ)を狩猟に誘い、「猪(イノシシ)と間違ったー」といって射殺してしまう。

さらには、遺体にすがって泣き叫ぶ、その皇子の息子まで殺してしまう。

 

この後も、狡猾な人の讒言を簡単に信じて、無実の人を処刑したり、百済王から「贈られた」女性が密通したといっては、焼き殺したり、家臣が天皇の要求にうまく応ずることができないといっては処刑しようとしたり、

まさに「悪王」そのもので

→「国内の居民、みな振(震=ふる)い怖(お)づ」(国内の人民はみなふるえ怖気づいた)「日本書紀

状態だったわけです。

 

書紀にはまた、こんな文章もあります

天皇(すめらみこと)、心(みこころ)をもちて師とし、誤りて人を殺したまふこと衆(おお)し、天下(あめのした)、そしりて言(もう)さく、「大(はなは)だ悪しくまします天皇なり」とまをす」

(=天皇は(常に)自分の判断を正しいとされたため、誤(あやま)って人を殺すことが多かった。天下の人々は(天皇を)誹(そし)って、「大悪の天皇である」と言った)

 

と、まあ、こんな調子で、日本書紀雄略天皇の「暴君」ぶりを描いていくわけですが、これは雄略天皇が「前覇者=蘇我氏」の大王「武」であれば、仕方ない「扱い」なのかもしれませんね。

 

ただ、雄略天皇の「死」に際して、書紀の記述は一転、雄略天皇は「思慮深い」名君となります。

 

雄略天皇の死を前にした言葉(遺詔)

→(現代語訳)「まさに今は天下が家族のようになり、平穏であり、竈(かまど)の煙もはるか遠くまで立ち上っている。これは天意が日本全土を安寧(あんねい)にと願っているからである。

臆病な自分を励(はげ)まし、一日一日を慎(つつし)んできたのは、思うに、人民のためであった。

~(中略)~

今、述べてきたのはわが身だけのことではない。

結局は、ただ人民を安泰(あんたい)に養(やしな)おうとするからである。そのために言ったのだ」

 

う~ん、まったく「別人」(笑)

最後の最後で日本書紀蘇我氏の偉大な大王=倭王「武」=ワカタケルを持ち上げたのは、

蘇我氏を滅ぼしたのは自分たち(天武・持統)の系統ではなく、天智(高宗)・藤原鎌足(王文度)なのであって、自分たちは蘇我氏の敵というわけではないんだよ、ということを主張したいからではないか?と思います。

 

このほかにも「雄略」記には興味深い記事が多くあって、

たとえば、当時「倭」が親密な関係を築いていた「宋」を「呉」と表記しています。

これは、「呉」の太伯の子孫を自称していた「倭」=蘇我氏として、「呉」のあった地を支配している「宋」を「呉」の後継として認識していたためでしょう。

そのため、日本書紀の記述も「日本」(=倭)と宋の関係を「親戚付き合い」のようなもののように描いています。(かなり交流が密だった)

 

この「宋」を滅ぼした北魏は「魏」の後継だったので、まさに「魏」対「呉」。

蘇我氏にとって北魏から出た「隋」「唐」が(潜在的な?)敵としてなじめないものであったのは仕方のないことでした。

 

このほか「雄略」記には、高句麗好太王の時代には同盟関係で、ともに「倭」と戦った高句麗新羅が、このころ敵対関係になった理由(=高句麗新羅占領の意志があることを高句麗将兵新羅の兵にもらしたため?)、なども書かれてあります。

 

ちなみに「浦島太郎」の「出来事」があったのもこの「雄略天皇」の時代だったと書紀に書かれています。

ただ書紀での浦島太郎(浦島子)の話は、助けた亀が女性に「変身」して浦島太郎と夫婦になり、二人で海に入って「仙境」に行った、ということになっています。

これに関しては、書紀のこの部分の「著者」が「浦島太郎(浦島子)」の話に詳しくなかった可能性も?(笑)→(この話は「別巻」(別の本?)にある、とわざわざ注釈をつけています)