何のために生きている?

と問われれば、もっと幸せな人間社会が見たいから

昨日のブログの続きになります。

その当時の著名な知識人、文化人、趣味人として幅広い交友関係・情報網を持っていた内田魯庵は、「大逆事件」の背後に長州閥=官僚制の存在があることに既に気づいていて、日本の官僚について、同じ「自筆本 魯庵随筆」のなかで、こんな鋭い批判をしています。

 

→『一体いまの官僚輩(はい=やから)は政府と己(おのれ)ら官僚とを同一視(どういつし)しておる。

政府といふは国家を統理するオーガニゼーション(組織)で官僚輩は之(これ)に拠(よ)るの労働者である。

然(しか)るに今の官僚輩はもと幕府を倒して取って代わって天下に号令する任に当たったゆえ、恰(あたか)も政府を以(も)って戦争の戦利品の如(ごと)く心得(こころえ)、之を以って私有の世襲財産となさんとしておる。

此様(このよう)に人民に参政権を与えながら、ややもすれば人民を以って自家(じか=自分たち)の世襲財産を硯(うかが)う盗賊なるかのごとく敵視する・・・』

 

魯庵氏の文章はまだ続いていくのですが・・・、これ、本質的には戦後も同じではないですかねえ?

まあ、日本の官僚制は戦前も戦後も同じものが続いているわけですから、当たり前といえば当たり前なんですけど・・・。変わった点といえば、彼らにとっての「お上」が戦前の「天皇」から戦後は「CIA?」というか、それを握っている外国の人に代わっただけ、と、いうことなんでしょうけど。(中曽根~小泉~安倍政権のいまだからこそワカル?)

 

ともあれ、「官僚機構」と「官僚派政治家」に逆らった日本人は“やられちゃいます” ?

(戦後でいえば、「成田空港」問題もその「線上」じゃないかと思うんですよ。 建設省を握っていた党人派が、人が多く住み生活する「陸地」での空港建設は無理、として「海上」での空港建設を決定していたのを、官僚派(政権)が「人民なんて虫けらにナニ配慮してカネを使うんだァ?として、党人派の「利権」をツブスべく強引に「成田」に変更。農民に無理やり立ち退きを迫ったことから「成田紛争」が始まりました。

・・・(追われる)人民の激しい抵抗にもかかわらず、「官僚派政治屋」「官僚機構」の「圧勝」に終わったのは見ての通り・・・)

 

もうひとつこの「魯庵随筆」から抜書きさせていただきますが、こういう文章もある

 

→『・・・無智なる警官の審問を受けて無智なる判事に裁判せられたる幸徳輩二十何人の所謂(いわゆる)無政府主義者の大逆なるものが果たして真実であろう乎(か)。

三宅君、犬養君、島田君、福本君、徳富蘆花君、皆(みな)之(これ)を疑う人である』

 

三宅君は三宅雪嶺徳富蘆花は言わずもがな、あとの三人は「政党派」の代議士。

犬養=犬養毅の名前があることに注目したいですね。

 

のちに、犬養毅は最後の「政党派」の大物として、軍の中国侵攻などに反対していましたが5.15事件で暗殺されました。

なお、この大逆事件のころの政党派の大物といえば、原敬で、桂内閣などと鋭く対立していましたが、この人も現職首相時に暗殺されています。

 

これまでわたしは5.15事件と2.26事件を「同系統」のものとして見ていたのですが、この「魯庵随筆」を読んでから、見方が変わりました。

 

2.26事件では多くの青年将校が処刑されましたが、5.15事件ではゼロ。みんな比較的軽い刑で済んでいます。

5.15事件では現職の首相(犬養毅)が殺されているんですけどね。また、此のときの“主要暗殺ターゲット”には2.26事件でその「首謀者」の一人として処刑された民間人が含まれていました。

 

実際に「決起」した青年将校・兵士の思いとは別に5.15事件の背後には犬養政党政治をつぶそうという「黒幕」の存在があったのではないでしょうか?(黒幕・・・官僚派)

犬養毅が「話せばわかる」と兵士たちに言ったのは、そういう背景があったからだと思います。

ともあれ、犬養の暗殺に依って政党政治は低迷し、これ以降(敗戦までは)「首相」を狙える人材は現れませんでした。

 

5.15事件は政党派をつぶしたから処刑者ゼロ。2.26事件は「政党派壊滅」のあとに起こした、官僚派を激怒させるものになったから大量処刑。

 

大ざっぱには・・・背後はさらに複雑だとは思うんですけどね。

 

あと大逆事件を担当した「検事」平沼騏一郎の存在とか・・・(平沼は東京大学法学部を主席で卒業した検察官僚。のちに「首相」にまで登りつめるが、西園寺には蛇蝎のごとく嫌われていて、平沼は最後まで西園寺を罵りつづけていたとか。戦後A級戦犯として終身刑。治療釈放の後、死去)

 

大逆事件」は現代日本に生きるわれわれの課題とつながっているんですよ。単なる過去の出来事ではありません。

 

人民に恐怖を与えて支配・コントロールするための「官僚派」の武器としての「死刑」についてはまた触れることがあると思います。

 

いまやっている「改憲」推進が「官僚派」によるものであることは、「反自由民主党」?の原案や安倍内閣の「やり方」を見ても明白だと思います。

 

(いま官僚派内部では「アベ使えねー」となっているみたいですけどね(笑)やっぱ官僚派は原則「東京大学法学部」でなくちゃ?ということでしょう?)